月を恋う人

貴方からの言の葉をば認めた文 思い遣りは要りません 
消え逝くと分かる淡い灯火 この文をせめて秘めたい懐に 

彼の姫は川を下る 隠されていた木彫りの船に揺られて 
岸辺から見詰める私 行く先を想いながら 

あぁ、この時もただ静かに 白い月は浮かぶ 仄かな微笑み 
あぁ、この時もただ静かに 白い月は浮かぶ 仄かな微笑み 


今も耳に届いている合戦の声 老いも若きも散っていく 
残されて留守を守る者達 待ち人は幾ら待てども戻らない 

段々と声が迫る 刀同士で受け合う音を率いて 
追い着かれ見付かる私 これもまた定めの事 

あぁ、この時もただ静かに 白い月は浮かぶ 仄かな微笑み 
あぁ、この時もただ静かに 白い月は浮かぶ 仄かな微笑み 


儚くも影武者 姫を太陽とすれば我が身は昼の月 
同じくして人目に触れはしない されどそう常に共にある対の存在 


あぁ、この時もただ静かに 白い月は浮かぶ 仄かな微笑み 
あぁ、この時もただ静かに 白い月は浮かぶ 仄かな微笑み 

あぁ、人の世はただ流れる 白い月はそれを 愚かと蔑む 
あぁ、人の世はただ流れる 白い月はそれを 愚かと蔑む 

私は触れたい 



認めた:したためた

文:ふみ

彼の姫:かのひめ