私と紫陽花ともう居ないあなた

あなたと過ごした時間は 私らしくなれなかった 
嫌いになるのも嫌われるのも 怖いからつい黙っていた 
ホントは望みを言えれば いくらだって言いたかった 
例えば話をする時になら もう少し近くに行きたかった 

様々な出来事のその度に 染みの様に心に色が落ちた 
褪せようと薄く残ったままで 消えて欲しくないとも思う 

六月のあの日この場所で 紫陽花が二人を見ていました 
冷たい雨が隠してくれた 涙の滴にも気付いていたでしょう 

心はまだ濡れているよ… 


「辛抱強い愛情」と 「移り気」との二つがある 
今なら私に合う花言葉 どちらかはあなたに決めて欲しい 

雨音で聞きにくい会話でも 何を言われているかなんて分かる 
溜め息の後に吸い込んだのは 土の湿る地面の匂い 

八月が過ぎたあの場所で 花はもう全てが散ったでしょう 
それでも見れば思い出しそう 忘れていたいから、しばらく見たくない 

意識しない様にしても… 


次の六月になればあの場所で 紫陽花はまた咲き誇るでしょう 
去年と何も変わらないまま あの日と同じ様、あなたが居なくても 
六月のあの日この場所で 紫陽花が二人を見ていました 
私にとって冷たい雨でも 恵みの水にする力を持った花 

想い出から種に変えて 次は何処で咲かせようか…