愛し君の咲み

包む淡い陽に 絆されて見た空は
透明な涙の色 果ても無く虚ろで

長い旅を馳せる 風に生まれたら
彼方まで行けたと 切に願い 今も

焦がれた胸を満たすは慕情
憂いのしじまに深く君を思って
はらはらと散る季節の花は
鮮やかに夢がまし 仄かに香る 


朝霧は白く 溶け込んだ死に化粧
綺麗なままで 寝顔に見えて 紅が映える

出会う時代だけを 二人は誤った
交わし合った約束 返事もなく 弔う

微かに頬を伝わる滴
跳ねた木の露なのか涙なのか分からず
とうとうと湧く終わらぬ孤悲に
囚われて彷徨って 褥を濡らす


在りし君を連れた 道をなぞる様に
跡が二つ長く伸びる 轍を辿る様に

揺蕩う月を映した水面
笹の葉の舟そっと 寄り添わせて浮かべた
離れてはまた近くに並び
いじらしい行く末を見守った

幾度も巡る春夏秋冬
独りには堪えても 土に還るまでは
再び芽吹く新たな花を
傍らの彩に手向け続ける